AIやスマホなどハイテク産業をプレス装置で支える世界的メーカーが、長崎に進出。
2025.03.28- 代表取締役社長 内田雅敏さん
- 2024年11月。長崎駅前電気ビル内に、また新たな企業のオフィスが誕生しました。今回長崎に進出してきたのは、広島県に本社を持つ北川精機株式会社。一般的にはあまり知られていませんが、「プリント基板用プレス装置」で世界的なシェアを持つメーカーです。
プリント基板は、スマホやパソコン、テレビなど、あらゆる電子機器に不可欠な部品。その製造に必要なプレス装置を世界中の工場へ供給しています。そんな同社がなぜ新たな拠点としてなぜ長崎を選んだのか。進出の背景や同社の素顔を内田雅敏社長に語っていただきました。
婚礼家具の合板用から、プリント基板用へ
北川精機の本社は広島県府中市にあります。府中は、かつて婚礼家具の生産量が日本一のまちでした。そこで当社は家具工場向けの合板用プレス装置の製造から始まりました。しかし1980年代になると、東南アジアから安価な合板が入ってくるようになり、国産の合板製造が下火に…。そこで新たな活路を求めて取り組み始めたのが、プリント基板を作るプレス装置だったんです。
プリント基板は合板と作り方が同じで、機械そのものの形もよく似ているんですよ。ちょうど日本の多くのプリント基板メーカーが多層板を作り始めた時代。プレス装置も最初は外国製のものが使われていましたが、日本製を使いたいという要望が高まり、当社にオファーが集まるようになりました。当社のプレス装置で作られたプリント基板は、スペースシャトルにも搭載されていたんですよ。国内に競合は1社ありますが、プリント基板用プレス装置の売上に限れば、当社の方が上。世界的に見てもニッチな市場なんです。
世界で8∼9割のシェアを誇る製品も
プリント基板用プレス装置には大きく「銅張積層板」用と「多層板」用の2種類があります。当社はどちらのプレス装置も作っており、特にスマホやサーバーの基板に使われる高機能銅張積層板用のプレス装置は、ほぼ独占状態。世界の8~9割のシェアを誇っています。
皆さんがお使いになっているスマホやPCの中にも、当社のプレス装置で作られたプリント基板が使われているかも知れませんね。プリント基板は単体では世の中に出回っていないので、一般の方にはあまり知られていないのですが、ICチップなどの電子部品をつないで電子回路を構成する重要なパーツ。どんなに高機能のICもプリント基板がなければ使えないのです。
近年は世界中で半導体工場が立ち上がっており、プリント基板の需要はますます高まっています。それを作るプレス装置も必要になりますから、2025年6月期のプレス装置の売上は過去最高に近い数字になると予測しています。
すべて受注生産。樹脂業界などにも進出
当社が長年支持され続けてきた理由は、精度の良さにあると思います。例えば銅張積層板を作る場合、銅箔とエポキシ樹脂のシートを真空下で加熱しながら貼り合わせていくのですが、畳くらいの大きさのシートに、均一に熱と圧力をかけないと不良が発生してしまいます。熱と圧力、真空を自在に制御するためにいくつもの特許やノウハウがあるんです。
加えて、すべてのプレス装置が基本的にオーダーメイドです。顧客であるプリント基板メーカーが求める仕様に合わせて、設計・製造し、据え付けまで、我々はすべて自社で行うことができます。装置の価格は、だいたい1セット3~4億円。お客様からは「高いですね」と言われることもありますが、それだけのものを作っている自負がありますし、注文はどんどん増えています。特に最近は、AIサーバー用のプリント基板がすごい勢いで求められています。
売上の6~7割がこうしたプリント基板用のプレス装置ですが、その技術を活かして、他分野へも進出しています。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)など樹脂業界向けのプレス装置や、ソーラーパネル成型用のラミネータ装置。また生産資材の保管や搬送を支援する装置も手がけており、ここ数年で伸びてきているのはレーザー切断機と連動して鋼材を保管・供給し長時間の連続自動運転を実現する「システムストッカー」という製品です。
長崎技術センターを開設
長崎とのご縁は3年ほど前から始まりました。従来の生産体制ではまかなえないほど忙しくなってきたので、長崎で新たな協力会社を開拓し始めたのです。長崎に着目したのは造船所がある地域だから。造船所の周りには大きな部品を扱える工場が多数あります。当社の主力製品である大型の真空プレス装置は、小さな工場では扱えないんですよ。それがご縁で、「長崎には若くて優秀な人材がたくさんいますよ」と誘致のお声をかけていただきました。本社がある広島県府中市は今、人口が4万人を切っています。
一度外に出た若い人は、なかなか帰ってきません。同じような危機感を長崎市も持っていらっしゃるようで、県や市がオフィスの家賃補助など、さまざまな支援を提案してくださいました。そこまでサポートしていただけるなら、やってみよう!と、長崎に拠点を作ることにしたわけです。
長崎技術センターの社員は現在3名(2025年1月時点)。4月には新卒が2名加わる予定です。10代、20代ばかりの若い拠点ですが、責任者には本社からバリバリのエースを送り込んでおり、主力製品であるプレス装置の設計を任せています。責任者自身もまだ30代なので、すごく張り切っていますよ(笑)。設計の拠点を外に作るのは初めてでしたが、コロナ禍の間に設計と工場がオンラインでやりとりできる仕組みを作りましたので、今は離れていても大丈夫。将来的には長崎を本社に並ぶような設計開発拠点にしていきたいと思っています。
長崎の人が地元で活躍できるように
長崎技術センターは長崎駅前の電気ビルに開設しました。地元では誰もが知っているビルのようですね。6階にありますから、駅前の見晴らしがすごくいいです。長崎に来て驚いたのは、駅の周りがすごく発展していること。また長崎の人材は、聞いていた通り、まじめで優秀な方が多いです。と同時に、長崎に愛着を持っている人も非常に多い気がします。そんな皆さんが地元で活躍できるよう、貢献できればと思っています。
長崎への地域貢献も、できることから少しずつ始めています。プロバスケットボールチーム「長崎ヴェルカ」をシルバーパートナーとしてサポート。長崎市の「20歳のつどい」も協賛しました。また県内にある2つの工業高校は寄付を通して、部活動をサポートしています。
私たちがめざしているのは、社員が胸を張って「いい会社だよ」と言える会社になること。「長崎ヴェルカ」の試合に社員を招待したり、社員の誕生日には食事会をプレゼントするなど、福利厚生の充実にも取り組んでいます。昨年は、社員旅行も復活させました。愛媛県の道後温泉へ行き、とても好評でしたよ。
「自分のマシン」を作る喜び。世界と戦うやりがい
私たちは「2030年6月期の売上高100億円、営業利益15億円」という中期経営計画を掲げています。その実現のため、今後も採用活動に力を入れていくつもりです。特注品づくりは未知の世界だらけです。自分で考え、解決していかないといけない。マニュアル通りにやるだけでなく、なぜこうなのか?と疑問を持ち、積極的に質問してくるような人たちと一緒に仕事をしていきたいと思っています。
当社の設計は、とてもやりがいのある仕事です。実は私も転職してきたんですよ。前職は自動車メーカーで設計をしていました。といっても、実際に担当していたのは1部品だけ。胸を張って「あの車を設計した」とは言えませんでしたが、ここでは違います。当社はどんなに大規模な装置でも、基本設計を担当するのは機械と制御の設計者が1人ずつですから、「自分のマシン」が作れるんです。しかも結果がすぐに出ます。長くても1年でできあがりますからね。そして良い製品ができれば、お客様からほめてもらえますし、「あの〇〇の中には、自分の設計したプレス装置で作られたプリント基板が入っている」という誇りも持てます。責任もありますが、それをやりがいと思える人だったら絶対「面白い!」と思えるはずです。
長崎の地で共に世界と戦うモノづくりに挑戦する情熱にあふれる人を待っています。ぜひ一緒にやりましょう。